雑誌「年金情報」によるランキング

格付投資情報センターが発刊する雑誌「年金情報」による投資顧問&運用会社の評価ランキングについて、説明します。

満足度を5段階で採点

調査は全国の年金基金を対象に実施。委託先の運用会社について、「満足度」を5段階評価で採点してもらったそうです。

<2005年>
順位 投資顧問・運用会社会社 詳細
1位 バークレイズ・グローバル・インベスターズ信託銀行(現:三井住友信託銀行) 詳細▼
2位 バークレイズ投信投資顧問 詳細▼
3位 J.P.モルガン・フレミング・アセット・マネジメント(現:J.P.モルガン・アセット・マネジメント)
4位 野村アセットマネジメント

「格付投資情報センター」(略称:R&I、東京都千代田区)は、年金に関する専門誌「年金情報」を発行している。格付投資情報センターの日本経済新聞の子会社です。

年金基金にアンケートを配布

「年金情報」では、全国の年金基金を対象に、「運用会社」の評判・評価に関するアンケートを行っています。それに基づいて、運用会社の評判ランキングが集計されます。

ここでいう「運用会社」とは、年金運用の委託先の会社のことです。この運用会社には、投資顧問も含まれています。

価値が高い

運用会社は、一般の個人投資家が利用する機会が少ないです。このため、利用者の口コミ(クチコミ)が表に出にくくなっています。 以上の理由から、「年金情報」が行う調査は、たいへん価値が高いです。

注目度が高いのは総合点である「全体評価」

評判アンケートの結果の中で、最も注目度が高いのは「全体評価」という項目です。すべてのサービスを含めて運用会社が総合的に判断されます。例えば「運用能力」や「情報開示」が含まれます。

相場が好調なとき「株式アクティブ運用」が高レビュー

調査では、高い運用成績を上げる会社が、おおむね高い評価を得ます。2023年上半期の株式相場ように、株式相場が好調なときは、「株式アクティブ運用」を手がける会社のレビューが良くなる傾向があります。

2023年と類似した相場としては、2000年代半ば(2004年~2005年度)にかけての時期が挙げられます。

2023年上半期の株式相場に類似する00年代(ゼロ年代)半ば【2004年~2005年度】

1位は「バークレイズ信託銀行(現:三井住友信託)」

ランキングの1位は、イギリスのバークレイズ銀行の系列の「バークレイズ・グローバル・インベスターズ信託銀行(略称:バークレイズ信託銀行/現:三井住友信託銀行)」でした。

2位は投資顧問会社「バークレイズ投信投資顧問」

2位は同じグループの投資顧問会社「バークレイズ投信投資顧問」でした。つまり、バークレイズ系が上位2位を独占したのです。

一言に「バークレイズ系」といっても、銀行、証券、投資顧問などいろいろな種類があります。この中で両社はいずれも、日本法人の一つ「バークレイズ・グローバル・インベスターズ」のグループに属していました。

資産運用の相談相手として高評価

バークレイズの投資顧問と信託銀行は、いずれも日本と海外の株式の運用で安定した実績を上げていました。「資産運用の相談相手として高く評価している」など定性面でも支持を集めていました。

3年連続トップ

バークレイズ信託銀行は3年連続の1位でした。計量分析に基づいた運用やヘッジファンド運用を手がけていました。計量的な運用手法で安定した超過収益を上げていることが、評判を呼んでいました。

エンハンスト・インデックス運用の年金からの受託残高は内外株式を合わせて1兆5000億円を超えていた。運用アドバイスなど定性面でも支持する口コミコメントが目立ちました。

バークレイズ投資顧問の歴史

日興と投資顧問で提携(1995年)

日本におけるバークレイズ投資顧問の歴史は、英バークレイズ銀行と日興証券が1995年6月、投資顧問の分野で業務提携したことから本格的に始まった。

かつて、バークレイズ・グループには、「BZWアセット・マネジメント(BZWAM)」「BZW投資顧問」という2つの投資顧問会社があった。1995年の提携では、このBZWアセット・マネジメントが、アメリカにある日興証券の子会社「ウェルズ・ファーゴ・日興・インベストメント・アドバイザーズ(WFNIA)」を買収しました。買収金額は総額4億4000万ドルでした。

「ウェルズ・ファーゴ日興投資顧問」を傘下に

ウェルズ・ファーゴ・日興・インベストメント・アドバイザーズは米国の企業ながら、日本法人として「ウェルズ・ファーゴ日興投資顧問」を持っていました。

この投資顧問をめぐり、日興証券グループが引き続き50%の持ち分を保有しつつ、バークレイズとの合弁会社として再編することになりました。

年金運用資産残高で最大手級に

提携により、バークレイズは日本において、既存の「BZW投資顧問」などと合わせて、年金運用資産残高で最大手の一つとなった。

一方、日興証券グループは、バークレイズが持つグ世界的な「カストディアン」(証券保管専門機関)機能を生かし、「ウェルズ・ファーゴ日興投資顧問」の保管・運用業務を強化することになった。

投資顧問会社「BZW日興グローバル・インベスターズ」発足(1996年)

翌年の1996年1月、日興証券は、バークレイズ銀行と合弁で、投資顧問会社を新たに発足させた。

新会社の名前は「BZW日興グローバル・インベスターズ」(東京都千代田区、岡本和久社長)とした。日興とバークレイズ銀行が半分ずつ出資した。その後、「バークレイズ日興グローバル・インベスターズ(BNGI)」へと社名変更された。

国際分散投資

新しい投資顧問会社の設立は、バークレイズ銀行の国際的な証券保管管理業務のノウハウなどを活用して、年金資産の国際分散投資を進めるのが目的だった。

日興が撤退し、提携解消(2003年)

バークレイズ日興グローバル・インベスターズは2003年9月、大きな節目を迎えた。日興証券(当時:日興コーディアルグループ)が株式を売却し、撤退したのだ。

株式は、英バークレイズ銀行が買い取った。バークレイズの100%出資になった。

「混在」状況を是正

バークレイズ側は経営の一本化を望んでいた。一方、日興側も、グループ内に複数の投資顧問会社を持っており、混在状況を解消したいと考えた。

会社名は「日興」の文字が抜けて、「バークレイズ・グローバル・インベスターズ(BGI)」に変わった。

投資顧問会社と投資信託会社が合併(2004年)

バークレイズは2004年4月、投資顧問会社「バークレイズ・グローバル・インベスターズ」(BGI、本社:東京都渋谷区)と、「バークレイズ・グローバル・インベスターズ投信」を合併させた。

日本での投資顧問と投資信託の業務が統合された。

13年にわたり業界をリードした岡本和久社長

存続会社は「バークレイズ・グローバル・インベスターズ投信」だった。合併後の会社名は「バークレイズ・グローバル・インベスターズ」となった。BGI株式3820株に対し、バークレイズ投信の株式87株を割り当てた。

社長には投資顧問(BGI)の岡本和久社長が就任した。岡本社長は日興証券出身。1992年に日興証券を退社し、バークレイズ・グローバル・インベスターズの設立に参加。2005年までの13年間にわたり社長を務めた。

ブラックロック・グローバル・インベスターズへ

その後、「バークレイズ・グローバル・インベスターズ」は、米国ブラックロック系列の「ブラックロック・グローバル・インベスターズ」になった。

バークレイズ・グローバル・インベスターズ信託銀行の歴史

一方、バークレイズ・グローバル・インベスターズ信託銀行は2008年、 住友信託銀行と合併しました。存続会社は住友信託銀行であり、会社名も住友信託銀行となりました。つまり、住友信託銀行に買収されたのです。

住友信託に買われる

その住友信託銀行は2012年、中央三井信託銀行及び中央三井アセットと3社合併を行った。住友信託銀行は再び存続会社となった。新しい社名は「三井住友信託銀行」となりました。

ということで、かつてのバークレイズ・グローバル・インベスターズ信託銀行は現在、「三井住友信託銀行」である。

GoogleのAIは「野村信託銀行」と誤解

2023年8月現在、Google(グーグル)で「バークレイズ・グローバル・インベスターズ信託銀行」と検索すると、検索結果の右側のGooglマップの欄(ナレッジパネル)に、「野村信託銀行」が表示されます。

しかし、野村信託銀行とバークレイズ・グローバル・インベスターズ信託銀行は関係がありません。これは、GoogleのAIの勘違いでしょう。

調査方法

格付投資情報センターの調査は2005年に行われた。全国の厚生年金基金771件、確定給付企業年金555件、主要企業3977社を対象にアンケート用紙を送付した。集計対象は厚年基金が290件。確定給付企業年金が256件。適格年金などを持つ企業が271社だった。回答率はそれぞれ37.6%、46.1%、6.8%。

満足度に加えて、委託先の変更予定や、評価の理由、委託先への要望などを尋ねた。なお、評価は年金基金によって採用している運用商品や運用スタイル、採点の基準が異なるため厳密な比較はできない。